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新世代の調理法、コンフィを使いこなす

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自炊が楽しくなる話

他の記事でも時々出てくる「コンフィ」という調理法があります。

聞いたことがない人もいるかもしれませんが、それもそのはずで、日本には昔にはなかった調理方法の一つです。

ですからコンフィという調理法を知ってはいても、詳しいことは分からない人がほとんどかと思います。

しかしこのコンフィという調理法をしっかりと理解すれば、料理が上手になる、どころか料理のグレードが上がること間違いなしの画期的な調理法なのです。

というわけで今回は「コンフィ」という調理法に焦点を当てていろいろと語ってみようかと思います。

低温真空調理の魔法・コンフィ

コンフィとは、もともとフランスの調理方法の一つです。

その歴史から現在の調理法まで、様々な観点からコンフィを理解していきましょう。

フランス料理としてのコンフィ

フランスでは昔からある調理法で、現地ではもともと、肉や果物などをオイルや砂糖に浸透させて保存性を高める調理法のことです。

食肉の場合はオイルに浸透させた後に低温で煮て加熱して保存性を高めます。

コンフィされたものは缶詰にされたりすることが多く、ようは、コンフィとは食材を長期保存するために編み出されたものということですね!

当時は「真空」にすると雑菌が繁殖しない、などという科学的根拠はなかったはずですが、それでも先人たちは、オイルで煮てオイルのまま保存し、空気と触れさせなければ保存性が高まるということを知っていたんですね。すごい!

現在では様々な肉をコンフィにしますが、昔はアヒルやガチョウなどの水鳥を使うのが基本だったようです。

現在ではいろいろなものがコンフィされるようになり、保存のためだけでない新世代のコンフィが数々生み出されています。

日本で発展したコンフィ

そんなフレンチの調理法が、料理人やメディアの手を伝って日本に入ってきたわけですが、日本で発展したコンフィは、もともとの「保存食」としての側面よりも、コンフィすることによって「柔らかくなる」ことに着目した調理法になりました。

また、大きな鍋に油を入れ、そこに食材を投入し、適温を数時間キープするというという専門性が高く難易度も高い調理法であったコンフィですが、調理器具や道具の発展により、手をかけずに温度調節したり、ひじょうに手軽に安価で、しかも専門的な設備がなくてもできるようになったりと、コンフィという調理法そのものの難易度が下がったことにより、いろいろな人がいろいろなアレンジをして楽しめるようになりました。

このようにフランスの手法であるコンフィを日本的に発展させていくのは、いかにも日本人って感じですね。

コンフィの基本

では、ここでやっと!

コンフィという調理法のやり方を解説していきましょう。

ざっくりと解説すると、食肉のコンフィの場合、

  1. 肉に下味をつけたり塩漬けにしたりする。
  2. オイルに漬けるか、密閉できる袋などにオイルを入れ、肉を入れたら空気を完全に抜く(これでオイルに漬けたのと同じ状態になる)。
  3. 60~68度の温度で加熱する(最低30分以上)

という工程となります。

何も考えずともこの工程で料理をすればコンフィができるわけですが、この記事を読みに来てくれた方々がそれで満足するとは私も思っていません。

この工程には、複数の疑問がちりばめられていますよね。ここからそれらの疑問をひとつづつ解説していきますよ。

なぜ肉に下味をつけたり塩漬けにしたりするのか

もちろん肉に味を付けるため、という意味合いはあります。これはどの料理でも同じですね。しかしことコンフィにおいては、もう一つ理由があります。

それは、塩などの浸透圧によって余分な水分を抜く、ということです。

水分を抜くことによって得られるメリットは二つ。

  1. 臭みが抜ける。
  2. コンフィ中に余計な変化を起こさない。

コンフィ中の余計な変化とは、加熱した際に細胞の中の水分が外に押し出されるという変化を、極力加熱前に行ってしまうということです。そうすることで、逆に肉の中に残る水分を多く出来るからです(この点に関してはのちほど解説)。

なぜオイルに漬けるのか

実は、オイルに漬ける必要はありません。厳密に言うならば、食材を劣化しない物質で覆えればよい、となります。

水分は劣化しやすい上に、食材の水分を吸収してしまうのでダメですが、例えば純粋に真空パックにできるのならばオイルは必要ありません。空気や水分に触れないような措置としてオイルが用いられるわけです。

そうして劣化しないもので覆われた食材は、環境による水分や旨味の流出を防ぐことができるのです。水分や旨味が流出しなければ、当然美味しくなりますよね!

なぜ60~68度なのか

これは答えは単純です。

肉のたんぱく質が固くなり始めるのが60度以上。70度を越してしまうと急速に細胞内の水分を押し出し始めます。そうして水分がなくなった食材はすごく硬くなってしまうのです。そこからさらに過熱して細胞そのものを壊すのが「煮込む」という調理法ですが、そこには旨味はあまり残りません。煮込み料理の美味しさは煮込んでいるソースの美味しさなのです。

対してコンフィは、つまり肉が固くならない境界線ぎりぎりの温度で加熱していくということですから、その美味しさは肉そのものの美味しさと言えます。肉を柔らかいまま旨味を保持する。コンフィが唯一無二の調理法である所以です。

なぜ30分以上加熱するのか

これにはいくつかの理由があるのですが、主な理由はまず、衛生面です。

通常、食中毒を起こすような細菌や寄生虫は高温で加熱しなければ死滅することはありません。60度程度の温度で死滅させるには、30分以上の加熱が必要とされています。

そしてもう一つの理由が、食肉の場合、肉の柔らかさを演出するのが「コラーゲンの破壊」なのですが、コラーゲンが破壊される温度は70度以上。コンフィでは少し温度が低いんですよね。そこで、時間をかけることによってコラーゲンを破壊していくのです。30分くらいで少し破壊され、そこからは時間をかければかけるほど破壊されていきます。

つまり、時間をかければかけるほど肉はやわらかくなっていくということです。これは煮込み料理と同じ原理ですが、コンフィの方が低温である分、余計に時間がかかることは覚悟しておきましょう。

科学的に考えて完璧な調理法がコンフィ

このように現代のコンフィは科学的にも追及された、完璧な調理法なんですね。ガストロノミーともいわれる科学調理は、これからの料理の新潮流ともいわれています。

今のコンフィはやわらかくするだけじゃない

肉の旨味を逃さずに極上の柔らかさに仕上げる。それがコンフィの基本です。

しかし、最近のコンフィはそれだけにとどまらないのですね。

あえてコンフィする時間を短くして、肉に火が入った程度にとどめておくと、どんなお肉ができるでしょうか。

答えは、肉の弾力をしっかりと感じつつも、水分を失っていないおかげでしっとりと柔らかいお肉が出来上がるんです。

さらに応用として、肉ばかりではなく魚などの魚介類にも同じことをすることができます。

また、じっくりと火を通すことができるこの加熱法ならば、ローストビーフを作ることも可能です。むしろ、ローストによって仕上げるローストビーフはどうしても外側に火が通ってしまいがちですが、一定の温度で加熱するため全体の水分損失が少ないこの方法は、よりおいしいローストビーフを作ることができると言えるでしょう。

こちらでもこの方法でローストビーフを作っております。

クリスマスで作るご馳走・簡単絶品ローストビーフ
ローストチキンもいいですが、やっぱり牛肉が食べたい!ということでローストビーフの登場です!誰にでも簡単にできる方法できれいなロゼに火を通したローストビーフのレシピを公開しちゃいます!

このように現在のコンフィは、保存食としてのコンフィを超えて、あらゆる料理の底上げをすることに一役買っているのです。

コンフィをするのに使える調理器具

古典的なコンフィをする方法は、大きな鍋に油を満たしそこに肉などを入れて加熱、温度計を逐一チェックしながら一定の温度を長時間キープしなければならないという大変手間のかかるものでした。

しかし、今の時代は違います。

便利な調理家電がたくさん生まれ、

またはたくさんのアイデアによっていろいろな方法が生み出されています。

ちょっと便利になったコンフィの方法をいくつかご紹介しますね。

密閉保存バック

そもそもコンフィには大量の油が必要でしたが、この密閉保存バック(ジップ○ックなど)の登場によりその概念は覆されました。

バックの中に食材を入れその食材を覆う程度の油を加えれば、コンフィの準備は完了です。驚くほど少量の油で食材を油漬けにすることが出来るんですね!

さらにこのバックのすごいところは、紺賦する程度の低温度帯ならば、十分に耐えうるということです。つまりこのまま調理してしまえるわけで、まさにコンフィのために生まれたのではないかというアイテムです。

炊飯器

炊飯器とは、ご飯を炊くためのキッチン家電です。

知ってますよね。

でも、この炊飯器がコンフィできる便利道具って知ってましたか?

使い方は簡単。

60度くらいのお湯を窯に張って、「保温」しておくだけ。

もともとご飯の保温が60度程度の温度帯をキープできるように調整されていることを利用した知恵のアイデアですね。

あとは密閉保存バッグとの併用で、コンフィしたい食材を中に入れておけば、あとは簡単にコンフィされるという寸法です。

コンフィの難しいポイントの一つである温度管理を自動で行うことができるので時間さえはかっておけば放置で大丈夫。

家庭でコンフィをするなんて昔は考えられなかったですが、今ではこの方法で家庭でも簡単に行うことができるようになっています。

この方法で作るレシピはこちらで紹介しておりますよ。

簡単コンフィでしっとり柔らか!ジンジャーポークソテー
普通に作ればただの生姜焼きも、少し手間をかければ絶品なレストラン料理に。コンフィという低温調理技法をおうちで簡単にできる方法で、信じられないほど柔らかに仕上げます。

低温調理器

そして近年ついに登場したのが、もはや簡単コンフィ専用キッチン家電です。

こちらは家庭にあるような鍋に設置するだけで、水温の調節や時間などを自動で計ってくれる優れもの、というよりも完全低温調理専用器具です。

専用ですから、当然使いやすく、また使えるシーンを選ばないのも特徴。

鍋、といいましたが実はボウルなどでもよいのです。なぜなら熱源を必要とせず、水の加熱もこの器具がやってくれるからなんです。また設定に達したらスマホなどで教えてくれるような連動機能も付いているものもあり、便利の範囲を超えている気もします。もはや本気家電です。

コンフィにとことんこだわりたい人は使ってみてはいかがでしょうか。一応商品リンクを張っておきますので、気になった人はどうぞ。

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料理は科学の時代に突入した

現場で料理をしていても思いますが、昔のような、肌で感じて感覚で覚える、というような時代はもう昔のことになったと思います。

いまでは、なぜそうなるのか、どううことをするとどんな変化が起きるのか。

そんな風に料理を科学する時代に突入したのだと私は思います。

昔の方法が悪かったとは、少なくとも今の若い人たちはこの科学的な料理の方が性に合っているのかもしれません。

なかなか面白い時代に突入したと思いますね。

ぜひ皆さんも料理を科学してみてください!

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