九月になり、残暑が続く中でも少しずつ秋を感じるようになるころ。
待ちに待ってやってくる行事が9月9日の「重陽の節供」ですよね!
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はい。
なんてことにはならないのが現代の「重陽の節供」です。分かっております。
はっきり言って重陽の節供とはなんぞや、と思っている人の方が大部分ではないでしょうか。
そうなんです。重陽の節供は現代では一般にほぼ忘れられてしまった行事なのです。
でも、重陽の節供は「五節供」に数えられる大事な行事ですし、昔は最も大々的に行われていた行事でもあるのです。
そんな重陽の節供を今回は解説したいと思います。
重陽の節供って何!?やるべきことや食べるべきものは?
五節供のおさらい!
先にも言ったように、重陽の節供は「五節供」のひとつです。
五節供とは季節の変わり目などで邪気を払い、良い季節を迎えられるようにするために行う行事に事です。
五節供ですから、当然五つあり、
人日の節供(1月7日)
上巳の節供(3月3日)
端午の節句(5月5日)
七夕の節供(7月7日)
重陽の節供(9月9日)
となります。このブログでも既にほかの節供はご紹介していますね。
重陽の節供は五節供の中でも最後に行われる行事になるのです。
重陽の節供の由来は
五節供には邪気払いとしての意味合いが込められています。それぞれの節供が季節の変わり目であったり、天気が崩れる前兆であったりと、物事が変わる節目であり、その隙間に邪気は集まると信じられています。なので払う必要がるという考え方ですね。ちなみに季節は旧暦で考えるとしっくりくると思います。
さて、では重陽の節供はということですが、季節でいえばちょうど農作物の収穫時。旧暦で換算すると今の10月頃にあたります。
あれ、収穫時と言えば、良いことですよね。邪気払いとは縁遠いように思えます。
でも重陽の節供もちゃんと邪気払いの意味が込められているんです。
重陽の節供はほかの節供と同様、中国から伝来したものです。
古来より中国では「奇数」は縁起の良い数字ととらえれていますが(だから五節供は奇数が重なる日付になっている)、その最大数である「9」に限っては、良すぎる陽の気は転じて最も不吉なことにもつながるとして「邪気払い」の必要があるとされました。
良いことが重なると悪いことが起きそうな気がしますよね?そんな感じです。
ですから、重なる陽の日を祝いながら邪気を鎮めるという意味で「重陽の節供」となったのですね。
五節供のほとんどはいうなれば「重陽」ですが、9月9日はその最大数ということですから、すなわち、一年の総決算的な節供になるわけです。
別名菊の節供
邪気払いとしての意味合いを持つ重陽の節供ですが、季節柄、祝い事としての側面も大きく持っています。
先にも言ったように農作物の収穫時であり、月の美しい季節でもありまよね。また、中国より伝来した「菊」が最も見ごろとなるため、菊を楽しみながら宴を開くのが恒例となりました。菊には薬草として寿命を延ばす効果もあると信じられ、大変縁起の良い植物です。そのため重陽の節供は「菊の節供」とも呼ばれ親しまれているのです。
ちなみに他の五節供でもちなんだ植物が設定されていて、
人日の節句=七草
上巳の節供=桃
端午の節句=菖蒲
七夕の節句=笹
ただしこれらの植物は当時(旧暦)で旬を迎えるものなので、今はちょっと違うんですよね。残念。
とはいえ、時期的に秋の収穫時期であることは今も変わりません。ぜひともみんなで重陽の節句を祝いたいものです。
重陽の節句の祝い方
さて、では重陽の節句とはどのように祝うのかということですが、
桃の節句ではお雛様を飾ったり、七夕では笹を飾ったりという祝い方があるように、もちろん重陽の節句にも祝い方があります。
菊は欠かせない
重陽の節句は「菊の節句」ですから、菊を欠かすことはできないでしょう。
古来中国で祝われていたころより、重陽の節句では菊を見ながら宴が催されてきました。少しばかり時期はズレてしまいましたが、これは今も変わりません。ぜひきれいな菊を愛でながら祝いたいものです。
現代の菊を用いた祝い方はいくつかあるのでご紹介しますね。
・菊酒や菊のお浸しなど
食用の菊を用いれば、漬け込んでお酒にしたりできます。そうでなくともお酒に菊を浮かべるだけでも風情がありますね。
また食用菊ですから、そのまま食べることもできます。茹でるだけでもいいですが、苦味が苦手な人は甘酸っぱくした酢の物にするとおいしく食べられますよ!
・菊の被せ綿(きせわた)
これは昔からある菊の楽しみ方で、活けた菊に綿をかぶせるというものです。
「なぜ??」
と思った人は多いと思いますが(笑)、これは被せ綿をし、一晩かけて菊の露や香りが被せた綿に染み込ませて、その水分で身を清めることで長生きできると信じられていたからなんです。菊は長寿の象徴でしたから、そんな楽しみ方もしていたわけです。興味がある人はやってみてはいかがでしょう?
・菊湯
菊を湯舟に浮かべて楽しむというやり方。菊の香りが湯に移ってなかなか楽しめます。今でいうハーブのような使い方は、現代でも十分楽しめるやり方ではないかと思います。
一年の最後にもう一度「後の雛」
じつは、重陽の節句では「雛人形」を飾るという風習も存在します。
これは江戸時代に広まった風習だと言われていますが、
桃の節句で厄除けに使った雛人形を虫干しも兼ねて飾るようになったのが始まりで、
時期的にも桃の節供から数えてちょうど半年、
そして一年で最後の節句である重陽の節句でもう一度お雛様を飾ろうという、雛人形を大事にする心、
それがこの後の雛に表れているのではないかと思います。
菊の節供ですから飾りつけはもちろん菊。時期的にも一年を締めくくるような穏やかな時期ですから、後の雛は「大人のひな祭り」と呼ばれることもあるそうですよ。
重陽の節句で食べるもの
というわけでここからがこのブログ的には本題になるわけですが、他の節供と同様に、重陽の節供にも「祝い飯」として食べるべき食べ物があります。ここからはそれらを少し紹介していきます。
菊
もうここまで読んでいただければ、これが来るのは当然分かっていたと思います。
菊の節供ですから、食用菊は欠かせません。食べ方としては様々で、サラダ、酢の物はもちろん、砂糖漬けにしてケーキにするというのもありでしょう。
特徴はその菊の香りと、苦味。子供にはちょっと難しい、大人の食材かもしれません。
栗ご飯
秋は収穫の季節ですから、秋に旬を迎える食材はたくさんあります。その中でも重陽の節供でよく食べられているのが栗で、一般的には栗ご飯にして食べられます。「栗の節供」とたとえられるくらいです。
栗は栗きんとんなどにしておせちでも食べられているように縁起の良い食べ物でもありますから、旬の食材の中でも「栗」が選ばれたのかもしれません。
茄子(なす)
茄子も、重陽の節供で食べるとよいとされている食材の一つ。
重陽の節供は「お九日(おくんち)」と呼ばれることもあり、
そして「くんち(九日)に茄子を食べると中風(ちゅうぶ。風邪などの病気のこと)にならない」と言われていて、だから茄子を食べるとよいとされるんです。
まぁ、そんなこと言われなくても、ナスが美味しい季節、食べちゃいますよね!
まとめ
というわけで重陽の節供のことはよくわかりましたでしょうか?
ざっくりと説明しましたのでわからない部分もあるかと思いますが、それは来年の重陽の節供にて解説したいと思います(笑)
ともあれ、一年で締めくくりとなる最後の節供「重陽の節供」。
皆さんから忘れられて久しいですが、せっかく食べ物も美味しく気候も気持ちが良いこの季節、皆で楽しみがてら祝ってみるのもいいのではないでしょうか?
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