食べ物を冷凍することに対して、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか。
残り物を日持ちさせるためにとりあえず冷凍。とか、
食材を冷凍するとまずくなる。とか、
冷凍しても忘れて期限が切れる。とか、
そんなイメージをお持ちではないでしょうか。
でもね、それって冷凍の仕方が悪かったり、冷凍したらどうなるのかを理解していないのが原因なんですよ。
冷凍をもっと知れば料理がもっと楽しく楽になる!今回はそんなお話!
冷凍はすごい!おススメの冷凍と冷凍食品
冷凍するとどうなるの?
まずは、冷凍すると食品がどうなるかを紐解いていこうと思います。
食品を冷凍すると、当然ですけど凍りますよね。では凍るというのはどんな状態を指しているのかと言えば、
液体が凝固点を上回り固体になること、です。
むかし理科で勉強しましたよね。
では、食品を冷凍したときに何が凍るのかと言えば、そうです、水分です。水です。食品中の水分が凍ることによって、食べ物は冷凍してあんなにカチンカチンになるわけです。
さて、この時食品に何が起こるのか。
これも理科で勉強したと思いますが、液体が固体に凝固するとき通常なら体積は減るのですが、水の場合は体積が増えるのですよね。
つまり、食品中の水分も、冷凍されると体積が大きくなる、膨張するわけです。
水分が膨張したときに食品に何が起こるのかと言えば、細胞の破壊です。細胞一つ一つの中にある水分が膨張して細胞壁を壊してしまう。
細胞壁が壊れた食品は、もちろん元の状態が維持できず、解凍したときに水分が流れ出し、元の状態よりも柔らかく、もしくはひどいときはパサパサの状態になってしまうんです。
これが、皆さんが「冷凍するとまずくなる」と思っている要因なのではないでしょうか。
もう一つ、冷凍すると起きるのが、状態の固定と細菌などの不活性です。
簡単に言えば、腐ることがなくなり、表面などについている細菌などの類も、氷点下の環境に置くことでほとんどを不活性化、眠らせることができるのですね。
これにより、冷凍すると長期保存が可能になることが多いのです。
ただしこれには注意すべき点があり、解凍時、細胞壁の破壊により水分が流れ出してしまうため、その水分をもとにして腐敗や、細菌の活性が早くなるので注意が必要です。
また、家庭用の冷凍庫などで注意が必要なのは、長期冷凍した食品は劣化し、腐ることもあるということです。
昔は違いましたが、現在の冷凍庫には霜を取る機能が付いています。冷凍庫を開けた時、庫内が氷で覆われてつららが立っている、なんてことはないですよね。それは冷凍庫が、定期的に庫内の温度を上げ、庫内表面に霜が発生しないように調節しているからです。これは素晴らしい機能なのですが、この機能があるせいで、冷凍庫内はほんの一瞬氷点下ではなくなり、溶けます。それは中に入っているものも例外ではありません。
技術の進歩によりその調節が絶妙になっているとはいえ、庫内の物は凍ると溶けるを繰り返していることになり、結果、長期冷凍をした食品は不味くなったり、水分が完全に抜けきってしまったり、それこそ腐ったりしてしまうのです。
冷凍食品にも賞味期限があるのはそのためなんですね。
これらが、食品を冷凍したときに起こることです。
冷凍は手抜きじゃない
じゃあやっぱり冷凍なんてしない方がいいんじゃん。
と思われるのは、早計であります。
上で解説したのはあくまでも「冷凍するとこういうことが起きる」ということであって、「こんなに悪いことが起きる」と解説したわけではありません。
食品の冷凍とは、冷凍したら起こることを逆手に取り、それを利用することに真髄があるのです。どういうことかと言えば、
「冷凍したら起こること」=「美味しくなること」
に変換できれば良いのです。都合の良い考え方かもしれませんが、それができてしまうのが無限の可能性を秘めた料理の素晴らしいところです。
細胞壁が壊れ水分が出てしまう。これは一見食品の劣化に思えますが、よく考えてみてもらえば、料理で炒めたり煮込んだりすることも細胞壁の破壊に他なりません。つまり冷凍することそのものが「調理の工程」の一つだと言えませんか?
また長期冷凍したら劣化するのであれば、長期冷凍しなければよいだけのことです。食品は勝手に冷凍庫に入るのではなく、私たちが入れるものです。私たちがきちんと計画をもって冷凍すれば、長期保存することもなくなるのです。
そもそも適度な保存期間であれば、冷凍ほど食品保存に適した方法はありません。
作りすぎちゃったからとりあえず冷凍しようとか、傷みそうだからとりあえず冷凍庫にしまおうとか、冷凍庫に入れることがただの手抜きにならないように、ちゃんと考えて冷凍すれば、しっかりと料理を美味しくするための手段の一つになることを覚えておいてください。
冷凍の特性を活かした冷凍方法
では冷凍という手段を活かすためにどのように冷凍すればよいか、ここでは基本をお教えいたしますね。
冷凍するのは下ごしらえをしてから
凍ってしまったものは、当然ですがそのままだと形を変えることができません。変な形で凍らせると、冷凍庫内で邪魔になりますよね。それに大きな塊で冷凍すると解凍するのにも時間がかかってしまいます。
食材を冷凍するときは、まずは下ごしらえしてから凍らせるのが基本です。
野菜ならある程度切ってから、肉も大きいものは切ったり薄く開いたりして、のちの使い方次第では塩こしょうしておいてもよいでしょう。とにかく「解凍したらそのまま使える」形にしておくと、解凍したときにも非常に便利なものになります。また、形は薄く、少なめの塊で凍らせると良いでしょう。解凍するときにすぐに溶かすことができるからです。一人前の塊を基本とすると料理面でも使いやすくなります。
冷凍した食品は基本加熱用
冷凍した食品の細胞壁は壊れます。なので、炒めたり煮たりする場合には、火の通りが早くなったり、味のしみこみが早くなったりしてとても有効です。
ただし、生の食感が欲しいサラダなどにはもちろん適していません。
また、様々な理由により冷凍に適さない食材があることも覚えておきましょう。
1、水分の多い食材(卵やレタス)は解凍時の水分流出でほぼ消失してしまいますので不可能です。
2、繊維質の野菜などは筋が残りやすいので、うまく加工してから(加熱したり、細かく切っておいたり)の冷凍が必要になります。
3、油分と水分が混在している食品(マヨネーズや生クリーム)は、冷凍時に分離してしまうので不可能です。ただし解凍後加熱して再乳化させることができるモノ(ベシャメルソースなど)は工夫次第で可能です。
調理済みの物も冷凍可能
素材の食材だけではなく、調理したものも冷凍することができます。
ハンバーグやチキンソテー、カレーなどは、一人前に分けて冷凍しておくと、解凍時にすぐに食べられてとても便利です。ただし、解凍時の条件は同じなので、焼き目の香ばしさが欲しければもう一度表面を焼く、分離した油分と水分を加熱して再乳化させる、といった工程は必要になります。
解凍するときはなるべく低い温度が望ましい
解凍方法にもいくつかありますが、基本的な考え方は、
低い温度でゆっくり解凍した方が食品の細胞破壊が少ない。
ということです。水分流出には「うまみの損失」も含まれることがあるので、解凍時の水分も一緒に料理しない場合は、できる限り優しく解凍した方が良いです。具体的には、
冷蔵庫解凍
↓
常温解凍
↓
流水解凍
↓
レンジなどで高温解凍
この順に水分流出が激しくなっていきます。できる限りは冷蔵庫でゆっくり解凍した方がいいということです。使う前日に冷蔵庫に入れておけばたいていは溶けますので、忘れないで解凍しておくようにしましょうね。
冷凍食品のイメージ
ここまでは、自分で冷凍するときの方法を解説しましたが、冷凍庫に入れる食品はそればかりではありません。
市販されている冷凍食品も、そのうちに入ります。
スーパーに行けば数限りなくある昨今の冷凍食品は、お弁当などのおかずにも特化し、使っている人も多いのではないでしょうか。
でも、冷凍食品を買う人も買わない人も「高いなー」って思ったことはないですか?
もともとの値段ではとてもじゃないけど手にするのをはばかられるくらい高い。実際に高い。単価で考えたとき、シュウマイ1個20円とかすることもあります。これは一食にかける予算をシュウマイだけでかなり圧迫してしまう値段です。かなりきつい。
ただそれなのに、結構使っている人がいる。それはなぜか。
常にセールをしていることが多いからなんですよねー。
冷凍食品全品3割引4割引は当たり前!半額なんてことも!
なんてチラシやポップよく見ませんか?しかも結構ずっとセールやってる。一か月のうち25日くらい半額なんじゃないのって思います。一時期よりも減りはしましたが(是正勧告による)常にセールしているイメージです。そんなに半額で売って冷凍す奥品業界は利益出るのかな、って思ったりもしますが、
でもあれは、おそらく「半額」が適正価格なのでしょう。いくら便利で種類も豊富で使いやすく作られた魅力的な冷凍食品であっても、高すぎたら売れません。それでも売れているのは、半額セールをよくやっていて、その半額こそが適正価格だからだということです。
買うなとは言いませんが、高いと思ったら半額でない冷凍食品は考えた方がいいかもしれません。
と、冷凍食品の悪いところばかりを紹介してしまったような形になるので、良いところも紹介しておきます。
冷凍野菜の栄養価は低くない
栄養を考えると冷凍野菜じゃなくて生野菜、と考える人もいるかもしれませんが、それは間違いです。冷凍野菜も元は生野菜ですし、細菌の冷凍野菜はクズ野菜ばかりではなく、旬で安くなった野菜を仕入れて冷凍したものが多いので、実は旬でない生野菜を食べるよりも栄養価が高い場合もあるんです。
一言で冷凍と言っても方法が違う
市販されている冷凍食品は、家庭でする冷凍と、同じ冷凍でも全く方法が違います。
そもそも冷凍する際に起こる細胞壁の破壊は、決まった温度帯で起こる現象です(-1度~-5度くらい)。この温度帯にどれくらいの時間、食品がさらされているかによって変わってくるのです。つまり、めちゃくちゃ早く冷凍できれば、細胞破壊は少なく、ときには全く破壊することなく冷凍できるわけです。
冷凍食品は、その急速な冷却で冷凍されています。家庭では不可能な冷凍も、冷凍食品は可能にしているということですね。特にCAS冷凍という最新の冷凍技術は、凍らせた魚が解凍したら生き返る、なんて現象をテレビでもやっていたほど、細胞に損傷を与えずに冷凍できる方法です。現在は冷凍食品でもこの冷凍方法を使っているものもありCASで冷凍できない食品はない、ということになるんですね。すごいですねー。
おススメの冷凍食品
おススメ、と言っても好みや、その時に食べたいものもあるので、基本的には好きなものを買えばよい、という話になってしまうんですが、それでは話になっていませんので、いくつかおススメ候補を挙げたいと思います。
冷凍野菜はおススメ!
上でも解説した通り、冷凍食品として売っている冷凍野菜は、家庭とは違った方法で冷凍されているので、家庭で冷凍するよりもはっきり言って美味しいです。旬の野菜を冷凍しているので栄養価も高い。使うメリットは十分にある冷凍食品だと私は思います。
冷凍の麺類はおススメ!
実は冷凍された麺って、すごく美味しいんですよ。
難しい理屈はいくつかあるのですが、簡単に言うと、プロがやるような、ベストな方法、ベストな環境、ベストな時間でゆで上げた、最高の状態の麺を、最高のタイミングで急速冷凍にかけるからなんです。つまり、茹で上げたばかりの美味しい状態の麺の状態を冷凍麺は維持しているのです。家庭では少しもたつくだけでどんどんと茹ですぎてのびてしまう麺の状態と比べれば、当然冷凍麺の方に軍配が上がるというわけ。ぜひ食べてみてください!
意外と肉の冷凍はおススメ!
これは冷凍食品としておススメというよりも、そもそもスーパーなどで売っている精肉には、冷凍肉を解凍して売っている場合が多く、それをまた冷凍して保存するよりは、最初から冷凍されている肉を買ってしまった方が美味しさは保たれるという話ですね。冷凍保存が前提で肉を買うのなら、最初から冷凍されている肉を買うのも手でしょう。
家でも冷凍のススメ
冷凍の話、どうでしたでしょうか。
知れば知るほど案外奥深い世界になっていると思いますが。正直奥深すぎるので、そこまで専門知識のない私には語りつくすことはできませんので、もっと詳しく知りたい方は調べてみていただければと思います。
ただ言えるのは、家庭でもどんどん冷凍した方が良いということです。
自炊をしていると、どうしても予定通りにご飯が食べられなかったりすることはよくあることです。そうなったときに、せっかく用意した一週間レシピが無駄になってしまうのは私の本意ではありません。
ぜひとも一週間にこだわることなく7品のレシピと取っていただき、食べれそうにない材料や作った料理は冷凍して、食べれるときに食べていただいた方がこのブログのレシピも有意義になるかと思います。
冷凍を活用して楽しい自炊生活をしてくださいね!
コメント